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柴崎友香さん、『きょうのできごと』を語る。
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私の出発点:柴崎友香さん 『きょうのできごと』 重なる「一瞬」世界輝く - 毎日...
かわちくんは不安そうな顔をして、わたしのほうを振り返った。 「大丈夫。失敗したら坊主にしたらいいねん。坊主って、いちばん男前が引き立つ髪型やと思うで」 「そうかなあ。……耳とか切らないでくださいね」
島田雅彦さん、『僕は模造人間』を語る。
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私の出発点:島田雅彦さん『僕は模造人間』 個性不在、文学を解体 - 毎日新聞
それでも童貞の処刑は目前だった。しかし、僕が今にも歓声をあげそうなバベルの塔にコンドームをつけようとする時……僕をからかうアトラクションボーイの亜久間一人が突然、巨大なコンドームとなって僕をおおい隠そうとした。写真ではない実物の真弓がそこにいるというのに亜久間一人は……(『島田雅彦芥川賞落選作全集
阿部和重さん、『インディヴィジュアル・プロジェクション』を語る。
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私の出発点:阿部和重さん『インディヴィジュアル・プロジェクション』 「今」描...
結論からいえばたぶんカヤマは存在しない。カヤマユウゾウは存在するのだろうがカヤマコウゾウは存在しない。コバヤシやカワイが知らないというのだからそうなのだろう。しかし、だとすれば、道玄坂のマンションでのヤクザ殺しはぼくがやったことになってしまう。それは困る。(『インディヴィジュアル・プロジェクション
高橋源一郎さん、『さようなら、ギャングたち』を語る。
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私の出発点:高橋源一郎さん『さようなら、ギャングたち』 弱さ、読者の心自由に ...
「ダディ」とキャラウェイが背中で言った。 「何? キャラウェイ。のどがかわいたの?」 「ううん、ちがうのダディ。キャラウェイ、じぶんであるいてく」 「いいから、ダディはキャラウェイをおんぶしていきたいんだ」
山田詠美さん、『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』を語る。
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私の出発点:山田詠美さん『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』 「女流...
オレの時より、少し声が小さかったようだぜ。小さな紙切れにはそう書かれていた。それを見た男たちは二度と彼女の部屋を訪れなかった。SHITと彼女は舌打ちをしながらも安らかな気持になり、悪くないわと呟いた。(『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』幻冬舎文庫より)
町田康さん、『くっすん大黒』を語る。
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私の出発点:町田康さん『くっすん大黒』 斬新さを出したかった - 毎日新聞
もう三日も飲んでいないのであって、実になんというかやれんよ。ホント。酒を飲ましやがらぬのだもの。ホイスキーやら焼酎やらでいいのだが。あきまへんの? あきまへんの? ほんまに? 一杯だけ。あきまへんの? ええわい。飲ましていらんわい。飲ますな。飲ますなよ。そのかわり、ええか、おれは一生……(『くっす
川上弘美さん、『神様』を語る。
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私の出発点:川上弘美さん『神様』 日本文学を変えた「波」 - 毎日新聞
「今日はほんとうに楽しかったです。遠くへ旅行して帰ってきたような気持ちです。熊の神様のお恵みがあなたの上にも降り注ぎますように。それから干し魚はあまりもちませんから、今夜のうちに召し上がるほうがいいと思います」(『神様』中公文庫より)
吉村萬壱さん、『クチュクチュバーン』を語る。
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私の出発点:吉村萬壱さん『クチュクチュバーン』 「きれいな言葉」骨抜きに - 毎...
「俺はこの世界を見ているだけの者だ。見ればお前さんもでっかい目玉を持っているようだが、それで一体何を見ているのだ。脳味噌(のうみそ)なんて、無さそうだしな。ガキはどうした。大方食っちまったんだろ。目脂(めやに)で一杯じゃねえか。随分泣くような目に遭ったか。それがどうした。俺はもう飽き飽きした……」(
村田喜代子さん、『熱愛』を語る。
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私の出発点:村田喜代子さん『熱愛』 じっと見るうちに崩れ - 毎日新聞
新田の身におこったことがふつうでないのはもう否定できない。ここに着いて二時間が過ぎていた。かれの不在はもう確定的だった。ぼくはふらつく頭でしかし問題をまとめにかかる。事故だろうか。いまじぶんが通ってきたコースのいくつかのきわどかったカーブの光景が瞼(まぶた)にやきついていた。(『八つの小鍋 村田喜
小川洋子さん、『妊娠カレンダー』を語る。
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私の出発点:小川洋子さん『妊娠カレンダー』 理由ないからこその悪意 - 毎日新聞
『防かび剤PWHには強力な発癌(がん)性。人間の染色体そのものを破壊する!』 あの時の一ページが、ぼんやり頭の中で揺らめいた。 皮も実もしっとり混じり合い、所々ゼリー状のかたまりができる頃、姉と義兄が帰ってきた。姉は真直(まっす)ぐキッチンに入ってきた。
加賀乙彦さん、『宣告』を語る。
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私の出発点:加賀乙彦さん『宣告』 人間の条件、深く問い - 毎日新聞
「あす、きみとお別れしなければならなくなりました」 「はい」他家雄は無表情のまま、凝(じ)っと所長を見詰めた。 「いいですか」所長は焦り気味に、言葉全体に真実らしさを与えるべく、重々しく言った。「これは冗談ではないのです」
三崎亜記さん、『となり町戦争』を語る。
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私の出発点:三崎亜記さん『となり町戦争』 柔らかくにこやかな洗脳 - 毎日新聞
「まず訂正させていただきますが、我々はとなり町と“殺し合い”は行っておりません。殺し合うことを目的に戦争をするわけではありませんし、戦争の結果として死者が出る、ということですからお間違えのないようにお願いします」(『となり町戦争』集英社文庫より)
吉田修一さん、『パレード』を語る。
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私の出発点:吉田修一さん『パレード』 小さいものを丁寧に - 毎日新聞
「どういう意味よ」 「だから、お前が知ってるサトルしか、お前は知らないわけだ。同じように俺は、俺が知ってるサトルしか知らない。良介だって琴ちゃんだって、あいつらが知ってるサトルしか知らないんだよ」
リービ英雄さん、『星条旗の聞こえない部屋』を語る。
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私の出発点:リービ英雄さん『星条旗の聞こえない部屋』 根源的な言葉で表現 - 毎...
鏡は割れていた。金属のフレームの中にいくつかの不規則なガラスの破片が、汚れた包帯のような黄色いテープでかろうじてつながれていた。そこに映っているベンの顔は、青白い肉のかけらとかけらがうまく合わないで、完成しそこなった奇妙なジグソー・パズルに似ていた。(『星条旗の聞こえない部屋』講談社文芸文庫より)
佐伯一麦さん、『ショート・サーキット』を語る。
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私の出発点:佐伯一麦さん『ショート・サーキット』 無私への到達目指して - 毎日...
佐伯一麦(かずみ)さん かれは、充電されている銅帯に、そろそろと右手をのばし、そっと手の甲で触れた。強い痛みとともに、指は弾(はじ)き返された。 かれは、生唾を嚥(の)み込んだ。太くなっていた動悸(どうき)が鎮まるにつれ、薄笑いが広がった。
池澤夏樹さん、『スティル・ライフ』を語る。
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私の出発点:池澤夏樹さん『スティル・ライフ』 「世界」に会いに行く - 毎日新聞
「何を見ている?」とぼくは聞いた。 「ひょっとしてチェレンコフ光が見えないかと思って」 「何?」 「チェレンコフ光。宇宙から降ってくる微粒子がこの水の原子核とうまく衝突すると、光が出る。それが見えないかと思って」(『スティル・ライフ』中公文庫より)
辺見庸さん、『自動起床装置』を語る。
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私の出発点:辺見庸さん『自動起床装置』 個がのみ込まれる悲しみ - 毎日新聞
「社が起床自動化というのをやるらしいなあ……」 自動覚醒機。起床自動化。二つの話はすぐ一つに焦点を結んだ。バイトに頼らず、機械を導入して「起こし」を自動化する計画……。しかし、どのような装置かだれも知らなかった。どうやって自動化するかも。(『自動起床装置』文春文庫より)
辻原登さん、『村の名前』を語る。
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私の出発点:辻原登さん『村の名前』 幸せすぎて「書かねば」 - 毎日新聞
ふたりは結局、畳表の仕事とは何の関係もなかったのだ。そして、あのちびとのっぽのふたりはいったい何者なんだ。橘のいらだちは募った。陶さんのたばこの濃い煙が橘の眉毛にひっかかって、指で払うまでとれなかった。(『村の名前』文春文庫より)
柴田翔さん、『されどわれらが日々−−』を語る。
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私の出発点:柴田翔さん『されどわれらが日々−−』 戦後青春の記念碑 - 毎日新聞
私がガラス窓越しに外を眺めながら、オープンシャツのボタンをとめていると、野菜をいためていた節子は、その私の肩越しに言った。 「私、こうやって、一生あなたのお食事、作って上げるのかしら」
三田誠広さん、『僕って何』を語る。
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私の出発点:三田誠広さん『僕って何』 自問自答、続けて40年 - 毎日新聞
そこには戸川レイ子がいて、僕が入っていけば、ふだんと同じむつっとした顔つきで「遅かったわね、何してたのよ」などと口ではぼやきながら、急に弾むような身のこなしになって部屋中を走りまわり、資料の整理やビラのガリ版切りなどの作業を与えてくれる。(『僕って何』河出文庫より)
奥泉光さん、『ノヴァーリスの引用』を語る。
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私の出発点:奥泉光さん『ノヴァーリスの引用』 一つではない現実 - 毎日新聞
どうせ七階まで登るなら酒を運搬するだけでは悔しい、一杯だけでも飲んで帰るとしようと、酒飲みに特有の意地汚い思考を巡らせ、階段に向かいかけたところで、電話をすれば済むことだと気がついた。なにしろこちらは酒を人質にとっているのだから、嫌でも誰かが降りてくるのは必定(ひつじょう)である。(『ノヴァーリス
石原慎太郎さん、『太陽の季節』を語る。
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私の出発点:石原慎太郎さん『太陽の季節』 小説は激情、別れた女 - 毎日新聞
部屋の英子がこちらを向いた気配に、彼は勃起(ぼっき)した陰茎を外から障子に突き立てた。障子は乾いた音をたてて破れ、それを見た英子は読んでいた本を力一杯障子にぶつけたのだ。本は見事、的に当って畳に落ちた。
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